ツール追っ掛け、二つ目はベルン <世界見聞録>


ツール・ド・フランスの追っ掛けの二つ目はスイスの首都、ベルンです。モンサンミッシェルを出発した一団(前回)がフランスの各地を回って、さらに国境を越えてスイスに入り、19日目にスタートする地がベルンです。



ベルンの駅前。ツールのオフィシャル店がひときわ目立ってます。



ここではスタートの模様の他、ツール・ド・フランスを陰で支える裏方さんたちの頑張りもつぶさに観察できました。そして内陸国ならではの夏の楽しみ方にはちょっとびっくり。

ベルンの避暑はひと味違う


ベルンはスイスの首都です。1990年代に家族で初めてヨーロッパを旅した国がスイスでした。熊がトレードマークのベルンは、街の外と中を隔てるように流れる渓谷の川、そこに掛かる橋から一直線に中心部に向かう道、その先にある大きな時計台、そして橋のたもとの熊の動物園が思い出に残っています。それらを思い出しながら、気持ちよく晴れ渡ったベルンの町を歩きます。ここへはレースの前日にバスでやって来ました。



ベルンの象徴である熊が迎えてくれます。上の橋のたもとに熊園があって、観光客に愛想を振りまいてます。



その熊が仰々しく武装して立つベルンの象徴、時計塔の前。レース前の飾り付けが出来上がっています。



この日はとにかく暑かった・・・


そんな暑い日の噴水は子供たちに大人気です。水に涼しさを求めるのは大人も同じ。スイスは内陸国ですから海は無いのですが、市内を蛇行して流れるこの川を楽しむのがベルン子の楽しみ、川遊びです。




渓谷のように流れる川へ降りていくと、芝生の広場が。川から上がってくる人たちがいます。


この川は思ったよりも冷たくて、日本人には10分と持たない冷え冷えの温度なのですが、寒さには強いアングロサクソン系には丁度良いのかもしれません。そのうえかなりの急流なのですが、それに構わず次々と乗り出していきます。

私も暑さに負けて川下りに興じたのですが、最初に体を水に浸すのが辛い。えい、やっ、と体を浸した瞬間に流れに体が持って行かれます。冷たい、でも気持ちいい。ドライバックを抱えて流れていきます。それにしては流れが速過ぎます。


川から上がった瞬間にまた暑さが体を覆います。熱いアスファルトの小道を、飛び地のように生えている雑草を選んで歩きながら、冷えた体は次第に元に戻っていきます。出発点に戻った時には、さあもう一回の気分。これがベルンの川下り避暑の醍醐味でしょう。大人たちがはしゃぐわけが分かります。しばし水と戯れたら、芝生の上でのんびり。




歩いてスタート会場へ


明けて翌日、スタート会場は町の中心を挟んでちょうど反対側でした。市内の中心部を通って歩いて向かいます。空は晴れ渡り、絶好のレース日和。選手たちはボトル運びに精を出すことでしょう。既に交通は遮断されて柵が設けられ、時よりウオームアップする選手たちやレース関係者の車両が通り過ぎます。


レース前には恒例のキャラバン隊がやって来ました


彼らがバラまく販促グッズをもらうのが楽しい。子供達へは積極的に撒くので近くにいるとおこぼれに頂戴できます。場所を選んで、投げてもらえそうな場所を探すのも楽しみです。


なんだか色々いただきました。日本でいう餅撒きのようですが、レースへの気分が高揚していきます。


さあ、スタート会場に着きました。ゲートが気分を盛り上げてくれます。


この人は一般人。楽しんでますね。



スイスの英雄はカンチェラーラ。2016年は彼が引退する最後のツール、そして最後のスイスということで、ステージに上がったカンチェラーラにはひときわ高い声援が上がります。



日本人選手、新城を有するランプレのチームバスです。各チームは一団となってバスと車で移動を続け、3週間のレースを戦います。レース前のしばしの時間、華やかさがチームバスを覆います。



チームバスの前に陣取ったファンたち。選手は気軽にサインに応じてくれます。選手もファンを大切にしています。観客と選手の距離が近いのが自転車レースの良いところです。



スタートの少し前、先回りして見通しのきく場所に移動です。この待つ時間がなんとも楽しい。



選手がやって来ました。いよいよレースのスタートです。



次々と通り過ぎる選手たち。



あっという間に一団は去り、静寂とまばゆい空が残りました。



ツールの裏方


会場前に陣取るオートバイ。彼らはレースになくてはならない脇役です。レースの只中を一緒に走り中継し撮影します。ツール・ド・フランスの映像を見たことのある人は、その臨場感に圧倒されたことでしょう。カメラマンを後ろに乗せて、時にアクロバティックに選手に迫る。日本ではあり得ない迫力と近接の映像を創り出す彼らの職人技がレース人気を支えています。



そしてもう一つ。これはなかなか見ることのできない風景です。ヨーロッパで広く使われている路面電車ですが、そのレールの上をツール・ド・フランスのコースも走ることになります。選手の乗る自転車は指二本分にも満たない細いタイヤが使われます。レールの隙間にその細いタイヤが嵌ったら大変、選手はものの見事に地面に叩きつけられることになります。下の写真でも線路がきれいに埋められて道路に凹凸が無いのが分かります。


そんなことが無いようにレースの前日までにその溝はキレイに埋められ道路はフラットになり、選手の通り過ぎるのを待つのですが、ツール・ド・フランスがその場を通り過ぎるのは一瞬です。通り過ぎた後は、素早く元の状態に戻して路面電車の運行に支障のないように復旧しなければなりません。これもその地元のお仕事になるのですが、その見事な風景を見る機会に恵まれました。

華やかな選手の一団が通り過ぎた後、たちまち作業員の一団がやってきます。


素早く線路を埋めている詰め物を除去するのが手始め。ツールを追い掛けているプロのカメラマンもその風景を逃しません。


道路に残った周辺物はグラインダーで平滑にして元通りに直していきます。実に手慣れたもの。その手際の良さは、日本人でも舌を巻きます。


この作業の一部始終を眺めていましたが、集団通過後30分足らずで元通りになりました。間もなく路面電車の運転が再開されます。こういった裏方さんを眺めるのもツール・ド・フランスの楽しみの一つ。自転車レースが文化のひとつとして定着しているのを感じます。


ベルンでの滞在もスターライトホテル


少し時間を巻き戻してベルンに到着した時のことを思い出してみます。スイスは物価が高いのはよく知られたことですが、宿泊費がべらぼうに高く、私の感覚では2~3倍といった感じです。ゲストハウスですらそんな調子なので、日本を出る前からスターライトホテル、つまりテント泊と決めていました。

市内と郊外の2か所のテント場があるのは調べてあったので、到着後に駅のツーリストインフォメーションで様子を聞いてみました。どうやら市内のテント場もツール・ド・フランス開催中でも利用は大丈夫とのこと。駅からグーグルマップに道順を聞いて歩いてみます。

川沿いを歩いていくと、ありました。2泊で38.8ユーロと、ゲストハウス並みの料金ですが設備は完璧かつ清潔です。



近くのスーパーで買い出し。これで2千円ほど。高いなあ。




ベルンには旅行者に便利な制度があって、宿泊中には市内の公共交通が自由に使えるチケットをもらえます。それがキャンプ場にも適用されるのには少々驚きました。もっともレースの当日は交通が遮断されるのでトラムも乗れなくなるのですが、その前後は問題なし。3日間の滞在のうち2日はこのチケットでカバーできるのには助かります。


さあてツールの一団は行ってしまいました。ツール・ド・フランス追っ掛け3回目はゴールのパリです。パリでのスタートは見たことがありますが、ゴールは初めて。ワクワクのパリはベルンの4日後です。


ではでは@三河屋


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