実際に起こった事件を、本人が演ずる、事件にかかわった人たちを総動員して映画を作る、そう聞いた時、あなたはどう思うでしょうか。
私は素直に、見たい、と思いました。観たい、ではなく、見たい、です。
『15時17分、パリ行き』という映画、クリント・イーストウッド監督作品です。
テロに立ち向かった3人の若者と乗客たちが再会 『15時17分、パリ行き』パリで全世界初披露
私は素直に、見たい、と思いました。観たい、ではなく、見たい、です。
『15時17分、パリ行き』という映画、クリント・イーストウッド監督作品です。
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2015年8月21日、ヨーロッパの高速鉄道タリスで実際に起こったテロ事件「タリス乱射事件」を、ドキュメンタリー風、などという生易しい表現では語れないリアルな撮り方で作られた映画です。
2015年8月21日、ヨーロッパの高速鉄道タリスで実際に起こったテロ事件「タリス乱射事件」を、ドキュメンタリー風、などという生易しい表現では語れないリアルな撮り方で作られた映画です。
テロリストに立ち向かったアメリカの若者3人が、実際に主演として出演するのみならず、そのパリ行きの列車に乗り合わせた乗客、撃たれた被害者、そして関係した警察、駅員などなど、可能な限り事件に遭遇した本人たちが出演して撮影されたと聞いて観たくなりました。
クリント・イーストウッドという俳優について多くを語る必要はないと思います。ダーティハリーは彼の十八番と言ってよい作品ですが、私はアイガー・サンクションのようなちょっとレアな方が好きです。
さて近年は監督としてのクリント・イーストウッドの方が有名なのですが、日本でも大ヒットした硫黄島玉砕(米国から見れば硫黄島陥落)を題材にして、日米両面から2本の映画として作られた『硫黄島からの手紙』と『父親たちの星条旗』は観た方も多いでしょう。これには魅せられました。
実は三川屋は、以前は年にビデオを含めて100本以上観ていた映画好きなのですが、ここ数年は旅やら非正規労働(詳しくは後述)やらで忙しくて、静かにスクリーンの前で佇む時間が作れませんでした。
映画は心を無にして観るタイプの三川屋は、ネットでスクリーンに対して最高の席を予約して、お気に入りのポテチを手にして幕開きを待ちました。
クリント・イーストウッドは詳細な台本を用意せず、役者(ここでは本人たち)と会話を積み上げて一発で撮ることで有名です。
実際には5分くらいの事件だったのだと思う、この事件。その5分に出会う、その時間に出会うための、それまでのそこにいた人達の人生、特に主人公3人の、凡庸かつ普通の人たちが、その一点に出会い、その瞬間を自らの判断で行動し、そして切り抜ける。
「スペンサー行け!」
ライフルを構える犯人に向けて、この一言で弾かれて、真正面に突き進んでいく主人公が大写しに成します。
撃たれてもオレは行くという覚悟すらせずに飛び出した、無意識にも近い心の奥の彼の欲求が画面に溢れていました。犯人に斬られて血まみれになりながらも、柔術で羽交い絞めにして無力にする。
軍人になって人の役に立ちたい、このどうしようもない自分を何とかしたい、そんな思いで軍隊に志願し、ブクブクの体重をシェイプアップして入隊試験に挑んだ彼。この一瞬にその成果が「降って」きました。
実は原作には、この犯人についても半生が綴られているそうなのだが、クリント・イーストウッドはそちらを描くことを選ばなかった。それはこの映画に理解のしやすさ、シンプルさをもたらしていると思います。
最近、自分の身の回りでも様々なものが偶然にも繋がっていた、繋がっていくという不思議なことが起こっています。
以前積み上げたもの、身に着けたスキル、重ねてきた経験が、今の自分の、未来の自分の行きたい先をナビゲートしてくれるというものです。
後から自分の人生を俯瞰した時に、ああ、あの時これをやったのは、次のこれをやるための布石だったのか、といった感じです。
映画の場所、風景に出てくるほぼ全て場所を、自分の足で踏んだことがある三川屋にとって、物語がリアリティ過ぎました。
アムステルダム、アントワープ、ドイツの街、タリスの車内・・・、これらはヨーロッパを徘徊しまくった者としてなじみ深いものであり、その場が、駅のホームの風景が、その空気感がモロに思い出されて、いま映画を見ているのだ、という感覚から離れてしまいます。
そこで起きる列車内銃撃テロ。そこで私が感じる臨場感は、普通の方には無い感覚、つまり事件の俯瞰者としてではなく当事者の感覚、それに近いものでした。
それは例えば、新幹線に東京から乗って大阪に向かう途中で、名古屋からテロリストが乗り込んできて、京都の手前で突然体中を武装してトイレから客室になだれ込んできた。前触れもなくそれに出くわしてしまった、そんな感覚なのです。
自分ならどうする、何が出来る、と考えて観てしまいました。まかり間違えば、自分が撃たれていたかもしれない、首筋を切られていたかもしれない、と。
この映画、レビューは常に超辛口の三川屋は ☆☆☆☆★ です。
ちなみに三川屋の評価は、
☆☆☆☆☆ 観ないで死ねない
☆☆☆☆ 払った以上の価値あり
☆☆☆ お暇ならいいわねコレ
☆☆ おいお前、気は確かか?
☆ 金返せ!オレの時間を返せ!
ではでは@三川屋幾朗
関連情報:
【映画評書き起こし】宇多丸、『15時17分、パリ行き』を語る!(2018.3.3放送)
この3人がフランス大統領から最高勲章を授与されるシーンで映画は締めくくられるのですが、その映像は実際の授与式でのもののようで、驚きました。
これほどリアルな映画がかつてあっただろうか。
クリント・イーストウッドという俳優について多くを語る必要はないと思います。ダーティハリーは彼の十八番と言ってよい作品ですが、私はアイガー・サンクションのようなちょっとレアな方が好きです。
さて近年は監督としてのクリント・イーストウッドの方が有名なのですが、日本でも大ヒットした硫黄島玉砕(米国から見れば硫黄島陥落)を題材にして、日米両面から2本の映画として作られた『硫黄島からの手紙』と『父親たちの星条旗』は観た方も多いでしょう。これには魅せられました。
実は三川屋は、以前は年にビデオを含めて100本以上観ていた映画好きなのですが、ここ数年は旅やら非正規労働(詳しくは後述)やらで忙しくて、静かにスクリーンの前で佇む時間が作れませんでした。
映画は心を無にして観るタイプの三川屋は、ネットでスクリーンに対して最高の席を予約して、お気に入りのポテチを手にして幕開きを待ちました。
ドキュメンタリーを本人が演ずるリアリティ
クリント・イーストウッドは詳細な台本を用意せず、役者(ここでは本人たち)と会話を積み上げて一発で撮ることで有名です。
実際には5分くらいの事件だったのだと思う、この事件。その5分に出会う、その時間に出会うための、それまでのそこにいた人達の人生、特に主人公3人の、凡庸かつ普通の人たちが、その一点に出会い、その瞬間を自らの判断で行動し、そして切り抜ける。
「スペンサー行け!」
ライフルを構える犯人に向けて、この一言で弾かれて、真正面に突き進んでいく主人公が大写しに成します。
撃たれてもオレは行くという覚悟すらせずに飛び出した、無意識にも近い心の奥の彼の欲求が画面に溢れていました。犯人に斬られて血まみれになりながらも、柔術で羽交い絞めにして無力にする。
軍人になって人の役に立ちたい、このどうしようもない自分を何とかしたい、そんな思いで軍隊に志願し、ブクブクの体重をシェイプアップして入隊試験に挑んだ彼。この一瞬にその成果が「降って」きました。
「全ての物事は繋がっていて、必然性がある」
実は原作には、この犯人についても半生が綴られているそうなのだが、クリント・イーストウッドはそちらを描くことを選ばなかった。それはこの映画に理解のしやすさ、シンプルさをもたらしていると思います。
最近、自分の身の回りでも様々なものが偶然にも繋がっていた、繋がっていくという不思議なことが起こっています。
以前積み上げたもの、身に着けたスキル、重ねてきた経験が、今の自分の、未来の自分の行きたい先をナビゲートしてくれるというものです。
後から自分の人生を俯瞰した時に、ああ、あの時これをやったのは、次のこれをやるための布石だったのか、といった感じです。
風景が私にはリアリティ過ぎる
映画の場所、風景に出てくるほぼ全て場所を、自分の足で踏んだことがある三川屋にとって、物語がリアリティ過ぎました。
アムステルダム、アントワープ、ドイツの街、タリスの車内・・・、これらはヨーロッパを徘徊しまくった者としてなじみ深いものであり、その場が、駅のホームの風景が、その空気感がモロに思い出されて、いま映画を見ているのだ、という感覚から離れてしまいます。
そこで起きる列車内銃撃テロ。そこで私が感じる臨場感は、普通の方には無い感覚、つまり事件の俯瞰者としてではなく当事者の感覚、それに近いものでした。
それは例えば、新幹線に東京から乗って大阪に向かう途中で、名古屋からテロリストが乗り込んできて、京都の手前で突然体中を武装してトイレから客室になだれ込んできた。前触れもなくそれに出くわしてしまった、そんな感覚なのです。
自分ならどうする、何が出来る、と考えて観てしまいました。まかり間違えば、自分が撃たれていたかもしれない、首筋を切られていたかもしれない、と。
この映画、レビューは常に超辛口の三川屋は ☆☆☆☆★ です。
ちなみに三川屋の評価は、
☆☆☆☆☆ 観ないで死ねない
☆☆☆☆ 払った以上の価値あり
☆☆☆ お暇ならいいわねコレ
☆☆ おいお前、気は確かか?
☆ 金返せ!オレの時間を返せ!
ではでは@三川屋幾朗
関連情報:
【映画評書き起こし】宇多丸、『15時17分、パリ行き』を語る!(2018.3.3放送)
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