中国の「一帯一路構想」で人類存亡を語る

追記:2019.5.26 香港と深圳で中国の「いま」を見た

中国を一帯一路構想で分析してみます。さらに人類の存続まで考えてみます。

日本から見ると「一帯一路構想けしからん」「中国警戒しろ」的な論調が目立ちますが、人類という大きなくくりで俯瞰して見ると、あながち中国がやっていることは間違いではないのではないか、と気付きました。

ここでは100年、200年というスパンと、人類の生存について語ります。良いか悪いかという判断は検討の外に置きますが、その理由は読み進むうちにお分かりいただけるでしょう。

最初にお断りしておきますが、これは中国礼賛ではありません。
極めて冷静な、近未来的かつ文化人類学的な見地で記してゆきます。
キーワードは「ヒト」です。「国」ではありません。


前置きはこれくらいにして、

一帯一路構想は、シルクロードに留まらず、東南アジアやアフリカまでその範囲を広げています。これはどこかで見た版図ですね。そう、近代ならば大英帝国、古くはモンゴル帝国、ローマ帝国を思い起こさせるでしょう。

人類の歴史というものは、繰り返し繰り返し、同じようなことが起きることが特徴です。今回はその発端が中国です。

中国がいま行っていることは、第二次世界大戦以前の覇権主義の焼き直しです。欧米の、特に大英帝国の成功例をテンプレート化して、大陸、海洋続きで「ヒトものカネ」を動かして統治するという、きわめて合理的な考え方です。参考になるコンテンツを挙げておきます。

(出典:PwC)

一帯一路とは何か? わかりやすく中国の経済構想を解説する
 https://www.sbbit.jp/article/cont1/34934

西側諸国にとって中国が厄介なのは、やることが早い、つまり意思決定が早いということ。そしていつでも独断で中止して方向転換できる、という事実です。

これに抗うのはかなり難しいと思います。中国において、人民は政府に抗うことはできません。人民の頼みの綱である外からの外圧、特にインターネットは電子的な万里の長城で防がれています。

少し脱線しますが、このような外と遮断することで成功した国のひとつが日本です。鎖国中にもオランダという「穴」を通じて、世界の最先端の情報は仕入れていた日本。そして、キリスト教の布教に名を借りた植民地政策を迫ってくる欧州から逃れた極東の国、日本。江戸時代の文化の隆盛と醸造は、遺産となって現在を潤しています。

話を戻しましょう。世界の背景と中国のやり方は明快です。



何が世界で起こっているのか?


いま起こっていることを整理してみましょう。

・米国覇権主義が自国中心主義に変貌して終焉を迎えつつある
・米国の衰退に対して中国が世界第一位のGDPとなる日は遠くない
・世界が右傾化している(自国中心的考えが受け入れられる土壌ができつつある)
・アフリカの中国化が進み、中国語が第二母国語化が始まっている
 (アフリカは世界経済の最後の砦だが、それを手中にしつつある)
・中国人口の巨大さを活かして「ヒトを輸出」している
・ヒトと共に「インフラを輸出」している
・ヒトの輸出により「中国文化を輸出」する

人の輸出により混血が進み現地化が促進されます。かつて歴史で起こったことと全く同じです。つまり、人類大移動です。それが成り立つだけの人口を抱えた国であることがポイントです。

これを嫌だと言って抗う方法は、戦争しかありません。しかし相手が悪すぎます。

ヒトの数が圧倒的です。とても良くない例ですが、中国と戦争をしても1億人、2億人と中国人が死んでも、中国という国は全く消え去りません。これ程の強大なヒトの集合体が滅ぶには、内部崩壊か、分裂しかありません。モンゴル帝国は、西はハンガリーまで手中にしましたが、その実は親族統治の国の寄り集まりでした。永くその時は続きましたが、やがて分裂し崩壊しました。中国エリアではモンゴル帝国が元になりました。

今の中国は、文化大革命という失敗を教訓として、一党独裁と超速経済の両面を上手に、西側から見れば姑息にコントロールし、内部にいる不満分子を巧みに抑え込み、どんどん国の外に影響力を拡大しています。

これにより起こることは、世界の中国化です。これにはたくさんの異論があるでしょうが、私はこれも「良し」とする立場で、その論拠をここで示します。これは大胆な仮説です。

中国は極めて戦略的です。ビジネスコンサルタントという立場から人類の存続という大テーマで俯瞰して見ると、中国はひとつの解決策、理想とも言えなくもありません。

国連という国を跨いだ決定機関があります。しかし既に世界規模の意思決定には不向きになってしまったこの「議会」に人類を委ねるよりも、中国という統一意思に委ねた方が、人類が生き残る可能性がある、そのようにも考えられます。その最大の理由は、AIの進歩の速度が、人類の予想を超えてしまい、凌駕される日が近いという危機感からです。

うだうだと、英国のブレグジットようなことをやっている間に、AIが人類を超えてゆきます。



AI時代の人類生き残り戦略


人類はAIに負ける可能性が高い、そうならないためには、何らかの歯止めを立てるなど、迅速な意思決定が必要です。しかし今の世界で主流である欧米型理論形成方法では、結論を導き出すのに時間がかかりすぎます。その結果起きることは、こののちAIが感情を持つまでに至ったとき、人間は動物園の中の保護動物になり、研究対象の動物のひとつになってしまうという残念な危機です。

AIの進歩はシンギュラリティ化(指数関数的超速進歩)しており、論議しているうちに人類は知性で勝てなくなります。知性の次は、感情です。AIが感情を持つという事は、AIが人間になるという事と同義語です。

具合が悪いことに、AIは10億人が試したり学習したりしたことを、完全コピーで10億のAIマシンにインストールできます。バイオクローンにこのAIがインストールされた瞬間に、人間を凌駕した知性を持ったAI人間が、あなたの周囲を囲むことになります。

論理も知識も知性も敵いません。あらゆる言語を操り、人類の英知を全て蓄えている人が、あなたの前に存在するのです。勝てる方法を教えて欲しいです。

SF的に考えると、好奇心旺盛の人類と同じAI人間は、人間を動物園に入れて観察し、実験し、より人間とは何かを研究して人間に近付こうとするでしょう。人類が織の中に入れられ、AI人間にジロジロ見られる日が訪れるやもしれません。

こういう人類の危機に対して、同時進行で大規模なテストケースが行えるだけの人口をもった中国は有利です。極端な政策なら、AI禁止が実行できます。

例えば、1億人ずつを二つの地域に住まわせ、対照的な政策を行い、成功した方を後に採用するというドラスティックなことを、一党独裁の強力な意思決定で行うことが出来ます。その選択は人類生き残りの選択となる可能性が高いと考えます。

ここでのポイントは、

・人類が生き延びるには迅速な決断が必要である
・AIの進歩のシンギュラリティにより人類はAIに勝てなくなる
・欧米型理論形成方法は時間がかかり、AIの進歩に負ける

上記の三つの文章には「可能性がある」が最後に付きますが、あり得ないことではないことをお感じになるでしょう。ホーキング博士がAIは止めるべきだ、と言ったのも無理はないことです。

さて、ヒトの数で言えばインドがあるじゃないか、そうおっしゃる方も多いでしょう。しかし、インドに行ってみれば分かりますが、カオスです。数えきれない程の多言語、異なる文化、異なる価値観、目に見えない階級制度であるカーストがいまだに見え隠れします。

路上には象が歩き、牛が横たわり、サルが横断します。「路上生活」という言葉の意味とその地の現実が我々の概念を超えています。ベッドを歩道に置いて生活しています。価値観や固定観念がダイナミック過ぎるのです。

インドは一応ひとつの国としての体は保っていますが、巨大な人の群れを一丸となって動かすには、価値観の振り幅が大き過ぎて無理があります。何か大きなことをやろうとしても、先導役に付いてきてはくれません。それに対して、中国は強力なタガを嵌めてふり幅を小さくし、アイデンティティを保って邁進できます。というか、既に実行しています。



いまが人類の分岐点なのかもしれない


千年後に、未来の人が歴史を振り返る時、今が大きな分岐点なのかもしれません。未来の歴史の教科書には「2000年代初頭、中国が台頭し世界を席巻し始めた。その勢いは世界に及び、大中国が作られた」という記述が載るかもしれません。

あるいは、「人類は核兵器で一度殲滅され、その一部が生き残り、現在に至る」、

あるいは、「AIが動物標本として人間を扱っている」のかもしれません。

人類の歴史など、地球の歴史では瞬きにも満たない瞬間であり、宇宙の時の流れではミクロにもナノにも満たない極めて短い瞬間でしかありません。ヒトは自分中心に物事を推し量って考えますが、人類の歴史、地球の歴史、宇宙の歴史、という超絶長いスパンで物事を見た時に、あなたの見方は変わって来るでしょう。

、というのは単なる言葉で、その実はヒト、つまり「欲望」のカタチです。国という名の「欲望の集合体」がどこへ行きたいのか、それをコントロールするのが人類が生き残るカギになります。上記のようにAIが欲望を持った時が人類という生物の終わりの時です。AIという脅威に負けずに人類が生き残るとするのなら、それを中国という「与党」に委ね、中小国となった現在の西側諸国が「野党」となって異論を唱えて方向性を修正させることは可能でしょう。


ここまでお読みになって、なんとも突拍子もないように見える近未来像ですが、あなたは「こんな未来はあり得ない」と言い切れますか?

そんな思索と気付きを、これを読んでお感じになられたのなら、嬉しい限りです。


ではでは@三河屋幾朗


追記:2019.5.26

香港と深圳で中国の「いま」を見た

2019年5月中旬、香港に飛んで深圳を見てきました。

中国で今一番ホットなのが、深圳です。アジアのシリコンバレーと呼ばれ、凄まじい進化がネットで伝わってきます。国際ビジネスコンサルタントとしては、この目で見て置かなければ。でも、あまり今は深入りしたくない。香港からならすぐ行ける。

まずは香港。30年ぶりに訪れた香港は近代中華を象徴するとても便利な「国」になっていました。一国二制度を遂行する中国において、香港は巨大な実験場です。




そして深圳。

中国の開発著しい深圳へは、「国境」の川を自分で歩いて渡って入国しました。深圳への表玄関の羅湖ではなく、西の落馬洲から入ったので、大した街ではないと、たかを括っていたら、見事に度肝を抜かれました。

橋を渡って「国境」を行く

バスとタクシーは電気自動車、バイクも電動、ビルは50階建て以上、道は広々、道路も香港よりキレイ、そして人が若い。



電気自動車はナンバーが緑なのですぐ分かります。市民の足は「電気」です。

住宅地にも踏み込みましたが、活気があります。ゴミゴミした感じが有りません。警官(公安)ではなく非武装の兵士が広場で睨みを効かせています。でも人々の顔は穏やか。近代都市、近未来が既にここにある、そんな感じです。


コンビニはセブンイレブンとファミリーマート。


GDPで2位に日本が返り咲くことは不可能だと思っていましたが、それは確かだと実感しました。眠れる龍は完全の目を覚ましてしまったようです。


あら、よく見る女優さんに男優さん。日本への留学ですね。
中国は日本の10倍の人口、そしてカネを持っている。世界2位の信用を基に、中国政府は無限に札を刷れます。
中国は私の知る限り56の、言葉も異なる多民族で構成されていますが、それを束ねる習近平さんの苦労は半端ないな、そんな風に思いました。香港は広東語ですが、若い世代は北京語だそうです。世界の民主化の波に置いていかれないように、香港を「実験場」にしていることは手に取るようにわかります。近代化と民主化の成功例を香港で作り、テンプレート化して全国展開するのでしょう。
それと同時に、一帯一路で、欧州への大陸横断の路を開き、アフリカを「植民地」し、かつての大英帝国の版図を踏襲するかのように、力を拡大する、そのダイナミズムを肌で感じました。
もう中国は私の知る中国ではないのだなと、認識を新たにした1日でした。


追記:2019.7.30 

日本は前言を翻し、事実上の一帯一路への参加表明を行いました

2019年4月25日の第2回「一帯一路」国際協力サミットフォーラムへ参加しています。
ちなみに米国は参加していません。

「2019年4月25日、第2回「一帯一路」国際協力サミットフォーラムが北京で開催され、国連事務総長らと37カ国の首脳や日本など150カ国を超える代表団が出席するも前回参加した米国は米中貿易戦争により一帯一路への批判を強めたために出席を見送った」  (Wikipediaより 一帯一路


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